「~ing」が「現在分詞」か「動名詞か」紛らわしい場合

    
 「限定形容詞用法」の「単独現在分詞(~ing)+名詞」と同一形態を取りながらも、文法的には「動名詞(~ing)+名詞」になるややこしい言い回しが(無数に)あります。
“I heard one of you came up with a revolutionary idea,” he said, “It’s a laughing stuff,” said a laughing staff in the office.
「諸君の一人が革新的アイディアを思い付いたらしい、って聞いたんだけど」と彼が言うと、「あれはお笑い種ですよ」と事務所の職員の一人が笑いながら言った。
 「come up with A」は「A(考え・企画等)を思い付く」の意味を表わす熟語。
 「stuff」は「~用のネタ・タネ・題材」の意味。「staff」は「職員・担当者・スタッフ」の意味。綴り字&発音が微妙に違うので混同に要注意。
 上例では、「a laughing stuff:お笑いぐさ」と「a laughing staff:笑っている職員」の違いに要注意です。
「a laughing stuff」=笑われるために存在している代物
に於ける「laughing」は「動名詞」なのに対し
「a laughing staff」={笑っている}職員
に於ける「laughing」は「現在分詞」になっています。
 「a laughing stuff:嘲笑の的」の動名詞表現は
用途を表わす(=前置詞の目的語になる)動名詞(for laughing:お笑い用の)+名詞(stuff:ネタ)
なのに対し、「a laughing staff:笑っている職員」の現在分詞表現は
限定形容詞用法の現在分詞(laughing:笑っている)+(現在分詞の)主語になる名詞(a staff:職員)
と、それぞれの「~ing」の文法的位置付けが全く異なります。
 両者の違いは、表記上は区別が付きませんが、音調的には次のような形で比較的明瞭に区別されます。
●「限定形容詞用法の現在分詞(~ing)+名詞」は、後続の「名詞」を強調(stress)して(bottom-heavy intonationで)読む・・・a {laughing} staff
●「用途を表わす動名詞(~ing)+名詞」は、先行する「動名詞」を強調(stress)して(top-heavy intonationで)読む・・・a laughing stuff
「用途を表わす動名詞(~ing)+名詞」と「限定形容詞用法の現在分詞(~ing)+名詞」の対照例
●boiling point(沸点) vs. boiling water(熱湯)
●a flying machine(航空機) vs. a flying doctor(空飛ぶお医者さん)
●living expenses(生活費) vs. living legends(生ける伝説たち)
●a murdering weapon(殺しの道具) vs. a murdering task(死ぬほどシンドい仕事)
●a sleeping car(寝台車) vs. a sleeping beauty(眠れる美女)
●a smoking room(喫煙室) vs. a smoking gun(銃口から煙が出ている銃=動かぬ証拠)
●a swimming pool(水泳プール) vs. a swimming dog(犬かきで泳ぐワンコ)
●a walking stick(歩行補助用の杖) vs. a walking dictionary(歩く辞書=生き字引=何でも知ってる人)
●working conditions(労働環境) vs. working women(勤労婦女子)
 「動名詞(~ing)」と「名詞」の組み合わせによる定型表現としては、上述の「~ing+名詞」が「用途を表わす動名詞+名詞」(例:cleansing tools:清掃具)であるのに対し、逆順になる「名詞+~ing」のパターンも(無数に)あって、その意味は「目的語となる名詞+動名詞」(例:money cleansing:資金洗浄)となります。
“What is your hobby?” ― “Bird watching.”
「あなたの趣味は何ですか?」 ― 「バード・ウォッチングです」
 「bird watching:バードウォッチング」は「目的語となる名詞+~ing(動名詞)」の定型表現で、「watching birds:鳥類を観察すること」の意味を表わします。
 この表現に於いても、昔の英語では「bird-watching」のように両者の間を「hyphen(ハイフン)」でつなぐ作法を取る場合が多かったのですが、現代英語人種はあまりそうした律儀な作法に従ってはくれません。
 「bed-making:敷布や毛布をきちんと整えること」のように今でもきちんとhyphenation(-)を伴うのが通例の語もあれば、「homemaking」・「housekeeping」(意味はいずれも「家計をきちんとやりくりすること」)のように「目的語名詞+動名詞」が今や完全に1語に合体したものもあって、どういう形で用いるかは慣用(&辞書表記)に従うしかない、というのが実情です。
「目的語となる名詞+動名詞(~ing)」の表現例
 発音の際にはいずれも冒頭の「名詞」に強調(stress)を置いて(top-heavy intonationで)読みます。
●mountain climbing(マウンテン・クライミング=登山)
●problem-solving(問題解決・・・「解決すること」よりむしろ「解決方法を探すこと」に主眼点のある語)
 この表現は、「名詞」としてよりむしろ「{problem-solving} ability:問題解決能力」のように限定形容詞として用いる場合が多いものです。
●songwriting(作詞作曲)
●WEB browsing(ウェブ・ブラウジング=インターネット散策)
●witch[-]hunting(魔女狩り)
 中世ヨーロッパでペストが大流行した際に、「怪しげな薬草を煎じたりしている一人暮らしの老女」を「疫病をばらまく恐ろしい”魔女”」に見立てて火あぶりにして殺しまくった集団ヒステリー現象のこと(・・・現代のインターネット上でもなお”火あぶり⇒ネット炎上”へと形を変えて盛んに行なわれまくっている「”悪魔”のレッテル貼り」)・・・現代英語でもなお引っ張りだこの大忙し英単語であることもあって、名詞の場合は「witch[-]hunt:悪者のレッテルを貼って迫害すること」の短い形で用い、形容詞の場合のみ「witch-hunting:魔女狩りめいた」の形(この場合の”~ing”は現在分詞)で用いるのが通例です。
    

コメント (1件)

  1. 之人冗悟
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