「不定詞」を用いた構文の中で、その”意味”はともかく、その”構造”について考え出すと何がなんだかワケがわからなくなるものが2つあります・・・後述する「be+to不定詞」と、ここでこれから詳説する「非人称動詞とto不定詞の組み合わせ構文」、具体的には「seem・appear」・「prove・turn out」・「happen・chance」といった動詞との組み合わせでto不定詞が用いられる構文です。
♪ It seems [that] he knows nothing about guns.
(♪) ⇒He seems to know nothing about guns.
上例に於ける”It”は、「”それ”の意味を表わす人称代名詞」ではなく、「”that節”と同格になる形式主語」でもありません・・・もし「that節と同格の形式主語」であれば、その「真主語であるthat節」を冒頭に出した次のような書き換えが可能なはずですが、上例に於ける”It”ではこの書き換えはできないのです。
「非人称のIt-that構文」からの書き換え構文に於ける「to ~(不定詞)」が「名詞用法」なのか「形容詞用法」なのか、文型(SPAT5)は何なのか、といった問題については、かなりややこしい(&英語学習者にとってはどうでもいい)のでひとまず置いておくとして、まずは上に紹介した3種の動詞(「seem・appear」 ・ 「prove・turn out」 ・ 「happen・chance」)の性質について(BEG:Basic English Grammarの復習になりますが)確認しておきましょう。
上例の「seem」のような動詞が「非人称のit」を主語に立てるのは不思議な気がしますが、実はこの「seem」、古い時代の英語では「主語なし=いきなり動詞で始まる」という(現代英語ではあり得ない)構造を取るものでした。
こういう動詞を「非人称動詞(impersonal verb)」と呼びます。
「主語なしで使う非人称動詞」は、現代英語ではそのままの形では使えないので、仕方なく「It seems that ~」のような「非人称のitを主語に立てる構文」にするわけです。
しかしながら、この構文が普通の「it-that構文」と異なる点は、「”仮主語”のitと対応する”真主語”のthat節」を文頭に出した次のような書き換えが成立しない点にあります。
♪ It seems [that] he is very tired.
⇒(×)That he is very tired seems.
「itを”仮主語”に立てる動詞」で「itと対応する”真主語”を文頭に出しての書き換え」が不可能な動詞は「非人称動詞」だと思ってください。
古い時代の英語では「主語なしで用いる非人称動詞」もさほど異常な形ではなかったのですが、現代英語ではもはや「主語なしで動詞から始まる英文なんてあり得ない!」ということでその用法は全て消滅、「便宜上の主語には”it”を立てる」という形に落ち着いたのです。
今なお(文語で)残っている「主語を必要としない非人称動詞」は、「meseems(私の目には~に見える=It seems to me that ~)」と「methinks(私は~だと思う=I think that ~)」の2つぐらいですが、いずれも「”非人称動詞”単独では使えない」ということで、主語代わりに「me(私)」を内包した(実質上2語構成の)形になっている点に注意しましょう。
♪ Methinks the Japanese are totally wrong in their attitude toward linguistic studies.
私が思うに、日本人の語学に対する態度は全くもって間違っている。
「seem”s”」・「think”s”」のように(主語が一人称の”me”のくせに)「三単現の”s”」が付いているのは、「一人称でも二人称でも三人称でもすべて一律に”s / es”(古来の三人称単数”eth”の変形)を付ける」という動詞活用が行なわれていた(17世紀後半以降は消滅した)古式用法の名残です。
現代英語の”非人称動詞”はもはや「”it”を立てずに独り立ち」は不可能ですが、次のような表現に於いては「本来存在したはずの”it”の省略現象」がよく見られます。
♪ [It] looks like he is very tired.
(♪) [It] looks as if he is very tired.
(♪) [It] looks as though he is very tired.
”it”のような「形式的な語句の省略」は英語の中ではしばしば見られるものの、「非人称の”it”」は基本的に省略できません・・・それが上の3例に関しては省略されているのは不思議な気がしますが、何のことはない、これは次のような「音調上の理由」によるものです。
●「非人称の”it”+非人称動詞1語だけ」の場合、”it”を省略した後にポツンと孤立する”非人称動詞1語”は語呂が悪すぎるので、”it”の省略は不可
●「非人称の”it”+連語構成の非人称動詞」の場合、”it”を省略した後に残る”非人称動詞連語”は(複数語構成のために)「it+α」に相当する音調的存在感を保っているので、”it”の省略が可
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