「条件節」と「譲歩節」

    
 英語で”仮定”の表現と言えば真っ先に思い浮かぶのが【if】ですが、この語は以下の3つの様態に分化します。
●「条件(condition)」の副詞節=もしも~だとすれば(=if ~ / in case ~)
I’ll stay home if it rains tomorrow.
もし明日雨降りなら私は家にいます。
●「譲歩(concession)」の副詞節=たとえ~だとしても(=[even] if ~ / [even] though ~)
I’ll go out [even] if it rains tomorrow.
たとえ明日雨降りでも私は外出します。
●「疑念(wonder)」の名詞節=果たして~か否か(=if ~ / whether ~)
I wonder if it will rain tomorrow.
明日は雨降りだろうか?
 これら3つのうち、”仮定”に属するものは”副詞節”を形成する「条件(もし~なら)」・「譲歩(たとえ~でも)」の2つのみであり、”名詞節”の「疑念(~か否か)」は”仮定”の表現とは無関係です。
 「もし~なら」という”条件”を表わす副詞節のことを「条件節(conditional clause)」と呼びます。
 「たとえ~でも」という”譲歩”を表わす副詞節のことを「譲歩節(concessive clause)」と呼びます。
 ”副詞節”ではなく”副詞句”の形で「条件(もし~なら) / 譲歩(たとえ~でも)」の意味を表わすものももちろんありますが、「仮定法」とは「条件・譲歩を表わす従属節(=副詞節)内に於ける<動詞の特殊形態>」を問題にするものなので、「副詞句」は(主語を伴わないため<動詞の形態変化>も発生しないので)「仮定の表現」ではあっても「仮定法ではない」ということになります。
I could buy it with a little more money.
あともう少しだけのお金で、それ買えるんだけど。
 上例の「with a little more money:あともう少しだけのお金で」は、”仮定(=あともう少しだけお金があったなら)”の意味は表わしているものの、”副詞句”なので、”仮定法”の対象外・・・対象となるのは次例のような”副詞節”で<動詞の形態変化>を伴う場合のみです。
(♪)I could buy it if I <had> a little more money.
私があともう少しだけお金を持っていたら、それ買えるんだけど。
You couldn’t buy love with a million dollars.
百万ドルでも愛は買えない。
 上例の「with a million dollars:百万ドルでもって」は、”譲歩(=たとえ百万ドル出したとしても)”の意味は表わしているものの、”副詞句”なので、”仮定法”の対象外・・・対象となるのは次例のような”副詞節”で<動詞の形態変化>を伴う場合のみです。
(♪)You couldn’t buy love [even] if you <paid> a million dollars.
たとえ百万ドル出したとしても、愛は金では買えない。
 「果たして~か否か」の”疑念”を表わす”名詞節”は(たとえ節でも)「仮定法」の対象外です。
I doubt if you really mean it.
君が本気でそれを言っているのかどうか、私には疑わしい。
 「譲歩(たとえ~だとしても)」に用いられる接続詞には【if】と【though】の2つがありますが、現代英語では
 「[even] if ~」は「たとえ~だとしても」という”未然の事態(まだ起こっていない事柄)の仮想的譲歩”に用いるのに対し、「[even] though ~」は「~ではあるが」という”已然の事態(既に起こっている事柄)の確定的譲歩”に用いる
という違いがある点に注意しましょう。
I will go out [even] if it is rainy.
たとえ雨降りだとしても私は外出する。
 「even if」を用いた上例では、今はまだ雨降りではありません。
I will go out [even] though it is rainy.
雨降りではあるが、私は外出する。
 「even though」を用いた上例では、今すでにもう雨が降っています。
 「譲歩(たとえ~でも)」の表現に於いては、「[even] if ~」 / 「[even] though ~」ともに、副詞[even]は本来”強調用”ですが、「if ~」に関しては「もし~なら(仮定)」・「果たして~か否か(疑念)」との区別を付け易くするために添えられる識別記号としての色彩も帯びています。
 日本語でも「もし・・・」とくれば”仮定”を想定させるものですが、予想に反して「もし・・・でも」の形で”譲歩”だったりすると、(なんだよ・・・なら最初から「もし」じゃなく「たとえ」で始めればいいものを・・・)という気分になるものです。英語の場合もやはり、「譲歩」のつもりなら最初から「even if ~:たとえ~でも」のように[even]を付けることで「if ~:もし~なら(仮定)」との区別がいちはやく付けられるようにするのが、読み手・聞き手への優れた配慮というものです。
    

コメント (1件)

  1. 之人冗悟
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