他者との大小・優劣等の相対関係を示す際に、日本語では「<より>~だ」・「<最も>~だ」のように<”程度”の副詞>を添えます。
この日本語の比較の作法と全く同じく、英語でも「<more:より> ~」・「<most:最も> ~」の形で相対関係を表わす場合がありますが、<more>・<most>の付加を行なわずに「形容詞」(および「副詞」)の形態そのものが変化することで「<より>~だ」・「<最も>~だ」の意味を表わす場合もあります・・・この形態変化を「comparison(比較変化)」と呼びます。
この日本語の比較の作法と全く同じく、英語でも「<more:より> ~」・「<most:最も> ~」の形で相対関係を表わす場合がありますが、<more>・<most>の付加を行なわずに「形容詞」(および「副詞」)の形態そのものが変化することで「<より>~だ」・「<最も>~だ」の意味を表わす場合もあります・・・この形態変化を「comparison(比較変化)」と呼びます。
相対関係を示すための形態変化(=comparison:比較変化)を起こす品詞は「形容詞」(および「形容詞」と同形の「副詞」、例えばearly, fast, late等)だけです・・・「名詞」(および「形容詞と異なる語形の副詞」)には「(語形変化による)比較変化」は起こりません。
「比較変化」は起こらなくとも、「more+副詞 / more+名詞」のような形での「比較表現」に乗せることは可能です。
「friendly:友好的に」のように「-lyで終わる副詞」であっても、同じ語形で「形容詞(友好的な)」になる副詞には当然「比較変化(friendly / friendlier / friendliest)」があります。
例外的な事例として、「形容詞と異なる語形の副詞」であるにもかかわらず「比較変化」を起こすものに
●soon:じきに / sooner:より早く / soonest:最も早く
●often:頻繁に / oftener:より頻繁に / oftenest:最も頻繁に
の2語がありますが、この例外的な2語を除き、「副詞の比較変化」は「形容詞と同形の場合の”おこぼれ現象”」と思ってください。
この章(CHAPTER)では、英語の多種多様な「比較」の表現を余すところなく詳細に解説します。
英語の「形容詞」(および「形容詞」と同形の「副詞」)の「比較変化(comparison)」には
●原級(positive degree)
●比較級(comparative degree)
●最上級(superlative degree)
の3つの級(degree)があります。
まずは「比較の3つの級(three degrees of comparison)」について、その「形態」を確認してみましょう。
♪African elephants are big, but blue whales are bigger; indeed, they are [the] biggest.
アフリカ象はデカいが、シロナガスクジラはもっとデカい。実際、シロナガスクジラは一番デカい。
上の英文に3つ出て来る形容詞【big:大きい】の形態に注目しましょう・・・同じ”ビッグ”が、形態に応じて、次の3つの意味で使い分けられています。
●【big】=「大きい」
外形上何の形態変化も伴わずにただ「大きい」とだけ述べているこの形態(big)を、「原級(positive degree)」と呼びます。
形容詞・副詞の「原級(positive degree)」は、動詞の「原形(root form)」と同じく、最も基本的な(素のままの)形態です。
●【bigger】=「より大きい」
「原級(big)」の語尾に”-er”を付けることで「より大きい」として他者に対する相対的優位性を示すこの形態(bigger)を、「比較級(comparative degree)」と呼びます。
「相対的”優位性”」とは、「当該語句の”程度:degree”に於ける”優位性”」であって「意味上の”優位性:excellence”」ではありません。
例えば、形容詞【mean:卑劣な】の比較級【meaner:もっと卑劣な】は、「意味の上では”優位”ではなく”劣位”」ですが、「程度の上では”優位”」です・・・比較級に於ける「相対的”優位性”」とは、このような「程度(良かれ悪しかれ)が上」の意味です。
●【biggest】=「最も大きい」
「原級(big)」の語尾に”-est”を付けた「最も大きい」の形で特定集団内に於ける最上位の相対的立場を示すこの形態(biggest)を、「最上級(superlative degree)」と呼びます。
「形容詞」(&「形容詞と同形の副詞」)の「原級」から「比較級」・「最上級」を作るための細かな作法については、この後の数段(PARAGRAPHs)でより具体的に解説します・・・ここではとりあえず「原級+er=比較級」・「原級+est=最上級」という大まかなルールさえ把握してもらえればOKです。
上の英文では、「原級【big:大きい】」・「比較級【bigger:より大きい】」に関しては特に注意すべきことはありません・・・注目したいのは「最上級【biggest:一番大きい】」の直前にある「定冠詞the」の存在(あるいは、不在)です。
[the]という風に角括弧(square bracket)で囲まれているのは[省略可]ということです・・・ということは、「”最上級”の前には定冠詞の”the”を付けてもよいし付けなくてもよい」というのが比較構文のルール・・・のようにも見えますが、その前にちょっと、上とよく似た次の英文も御覧ください。
比較対照のため、冒頭の「[the]があってもなくてもよかった最上級」の例文と並べて掲げておきましょう。
African elephants are big, but blue whales are bigger; indeed, they are [the] biggest.
(♪)African elephants are big, but blue whales are bigger; indeed, they are the biggest animals.
アフリカ象はデカいが、シロナガスクジラはもっとデカい。実際、シロナガスクジラは一番デカい動物である。
かたや「[the]は付けても付けなくてもよし」、片や「theは必ず付けるべし」というこの違いは、次の原則によるものです。
●「叙述用法(=SVCまたはSVOCの補語Cになる用法)」の形容詞の最上級の直前には[the]は付けないのが基本(・・・だが、付けても間違いにはならない)
これは、語調上の理由(”the”があると煩雑で発音しにくいから)と同時に、「定冠詞(the)は”名詞”に付くものであって”形容詞”に付くものではない」という意識によるものです。
●「限定用法(=直後の名詞を修飾する用法)」の形容詞の最上級の直前には必ずtheを付ける(・・・無冠詞で使ったら間違いになる)
「{形容詞}+名詞」の形態では主役はあくまで「名詞」であるため、「形容詞が”最上級”だから”the”が付く」というよりむしろ「直後が”名詞”だから無冠詞のままでは具合が悪い」という理由で「限定形容詞の最上級には必ず”the”を付ける」と思ってください。
上の解説はあくまで「英語の本流(イギリス)の考え方」であって、アメリカ人の多くは「”最上級”だから”the”が付く・・・そういうものでしょ?」という感覚のようで、イギリス式なら無冠詞になるべき最上級の事例のほとんど全てに関して「”the”+最上級」の形態を頑固に貫きます・・・ので、そういう大雑把なアメリカ式を基準に話を展開したのでは全く「文法解説」にならないので、この後の解説は基本的に「英語の本家本元としてのイギリスでの比較構文の考え方」を中心に展開します。
以上は、「形容詞の最上級」に関するルールでした・・・では、「副詞の最上級」についてはどうでしょう?
♪Cats run fast, but cheetahs run faster; indeed, they run [the] fastest.
ネコは速く走るが、チーターはもっと速く走る。実際、チーターは最速で走る。
上例では、動詞”run:走る”を修飾する副詞として
●【fast:速く】・・・副詞の「原級」
●【faster:より速く】・・・副詞の「比較級」
●【fastest:最も速く】・・・副詞の「最上級」
の3つの形態が使われていますが、注目すべきは「副詞の最上級fastest」と「定冠詞the」の関係です・・・そこには次のルールがあります。
●副詞の最上級の直前には[the]は付けないのが基本(・・・だが、付けても間違いにはならない)
ややややこしい書き方をしましたが、要するに
基本的に(形容詞・副詞ともに)最上級の直前には定冠詞”the”を置いておけば間違いはない
ということになるわけです。
「最上級の直前に”the”を付けたら間違いになる」という例外的な場合もありますが、そちらについては後々また解説します・・・初歩の初歩段階では「最上級の前にはtheを付けておけばひとまず安心」と割り切って覚えておくのがよいでしょう。
特にアメリカ英語では、(基本的に”無冠詞”であるはずの)「叙述形容詞の最上級」・「副詞の最上級」いずれもその直前に”the”を付ける場合が多いので、「American English(米国式英語)」を身に付けたい人の場合は「(よほど語呂が悪くない限り)最上級は”the付き”で使う」と割り切ってもらってOKです。
ということで、「最上級と定冠詞」の基本的ルールに関する解説はおしまい・・・ではなくて実は、「比較級 / 最上級」には上述の「原級+er / 原級+est」とは異なる形態のものがあり、そちらの形態を取った場合の「最上級と定冠詞」のルールは上述のものとは少々異なるのです・・・どういう違いがあるか、確認してみましょう。
♪African elephants are enormous, but Argentinosaurus were more enormous; indeed, they were the most enormous.
(♪)African elephants are enormous, but Argentinosaurus were more enormous; indeed, they were the most enormous animals.
アフリカゾウは巨大だが、アルゼンチノサウルスはもっと巨大だった。実際、アルゼンチノサウルスは最も巨大だった。
「Argentinosaurus (アルゼンチノサウルス)」は、その名の通り南米アルゼンチンで化石が(1993年に)発見された(2019年現在)史上最大の草食恐竜。その最大の個体は、頭の前端から尻尾の後端までの長さ約45メートル、体重約100トンもあったと推定される。
上に2つ並べて書いた英文では
●【enormous:巨大な】・・・形容詞の「原級」
●【more enormous:より巨大な】・・・形容詞の「比較級」
●【most enormous:最も巨大な】・・・形容詞の「最上級」
という形で、「比較級 / 最上級」が「原級の末尾の語尾変化(⇒-er / ⇒-est)」ではなく
●more+原級=「比較級」
●most+原級=「最上級」
という風に、「原級」の形はそのままで「比較級表示記号としての【more】 / 最上級表示記号としての【most】」を直前に伴うことで「比較級 / 最上級」であることを示しています。
この「more+原級による比較級」・「most+原級による最上級」のことを「ローマ風比較(Romance comparison)」と呼び、「原級+erの比較級 / 原級+estの最上級」のことを「サクソン風比較変化(Saxon comparison)」と呼びます。
「ローマ風比較」が用いられる場合の詳細な解説は後の段(PARAGRAPH)に譲りますが、とりあえず
長い単語(音節の数で言えば、3音節以上を持つ単語)の場合は「more+原級 / most+原級」(ローマ風比較)の形を取り、「原級+er / 原級+est」(サクソン風比較変化)の形は取らない
「most+原級による最上級」の場合、「限定形容詞用法(直後の名詞を修飾する用法)の形容詞の最上級」の直前には必ず定冠詞”the”を付ける・・・「叙述形容詞用法(補語になる用法)の形容詞の最上級」の直前にも(必須ではないが)定冠詞”the”を付けるのが望ましい
というルールを覚えておきましょう。
もしこのルールに従わず「叙述形容詞(補語になる)用法の形容詞のmost最上級」に「定冠詞the」を付けないと、どういうことになるか・・・ちょっと実験してみましょう。
(×)they were most enormous
上の英文は、これはこれで通じます・・・が、その内容は「彼らは<最も>巨大だった」ではなく「彼らは<非常に>巨大だった」に化けてしまいます・・・つまり
【the most -】は「最も-だ」の”最上級”だが、【most -】は「極めて-だ」の”強調・力説”の言い回しに過ぎない
ということなのです・・・従って、「彼らは最も巨大だった」の最上級表現は、たとえ「叙述形容詞用法」の場合であっても、【most】の前に定冠詞”the”を付けて「they were the most enormous」とするのが(必須ではないのですが)望ましいのです。
もっとも、現実の英語では、「最上級の【most】=一番~だ」でも「強調・力説の【most】=極めて~だ」でもどっちでもいい、というテキトーな場面がやたら沢山あるので、「”the”を付けると何となく言い辛い」とか「ふと気付いたら”the”を付けていた」とかの実に気紛れな偶発的事情によって【the most】にしたり【most】のままで通したり、といったことがごく当たり前に起こります・・・要するに、「”最上級”は気分次第で何となく使われる気紛れでいい加減で当てにならない表現」であるということです・・・これは”ケナシ”で言っているのではありません ― “客観的事実”として「英語世界に於ける”最上級”の位置付けは(日本人英語学習者の想像を絶するほどに)テキトー」なのです。
「theなしのmost」で「強調・力説」の言い回しになる【most】のことを、「絶対最上級(absolute superlative)」と呼びます(詳しくは後述)・・・この場合の”絶対”とは「何らかの客観的で厳正な基準に照らしての”相対比較上”の最上級ではない」という意味、要するに、ただ単に自分自身の気分の上で”何が何でもゼッタイ~なのだッ!”と叫んでいるだけの”独り善がり最上級”ということです。
・・・上は「形容詞」に【most】(&the)を付けて最上級にする事例でした・・・一方、「副詞」の最上級を【most -】の形で作る場合は、少々厄介です。
既述の通り、副詞の最上級は「無冠詞」が基本・・・ですが、【most+副詞(原級)】の表現に定冠詞”the”を付けずに使うと、単なる”強調・力説”だけの「絶対最上級」と誤解されてしまう危険性が高い・・・ので、ここはやはり「the+most+副詞」の定冠詞付き最上級表現を選ぶのが妥当でしょう。
♪Cats live idly, but sloths live more idly; indeed, they live the most idly.
ネコはのんびり生きてるけど、ナマケモノはもっとのんびり生きている。実際、ナマケモノは一番のんびり生きている。
基本的には「無冠詞」で用いる「副詞の最上級」でも、「most+副詞」の形態を取る場合には、「the+most+副詞」の形態を取ることで、単なる”強調・力説”の「most+副詞(=絶対最上級)」と区別した方が望ましい(場合が多い)
と覚えておきましょう。
なんとなくいいかげんな感じですが、それぐらい「最上級に定冠詞theを付けるか付けないか」は(定冠詞必須の「限定形容詞用法の最上級」の場合を除き)話者・筆者の個人的裁量に委ねられている、と思ってもらって構いません。
「定冠詞the」が付くのは「最上級」ならではの特徴です。「”the”は、”一番”であることを示す”王冠”である」と覚えておきましょう。
「定冠詞the」が「原級」に付くことはありません。「the+比較級」の特殊構文は存在します(&後で詳述します)が、「定冠詞theは最上級に付くもの、原級・比較級にtheは(基本的に)付けない」と覚えておきましょう。
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◆回答者は、質問者から自分への直接のお礼のコメントがなくても、悪く思わないこと◆