【seem】・【appear】は「~に見える、思える」の意味を表わす非人称動詞です。
●that節内の動詞が「be動詞」の場合
♪It appears(=seems) [that] he is very tired.
彼はとても疲れているように見える。
「非人称主語構文」の中での[that]はしばしば省略されます。
上と同じ「非人称構文」で、”that”を伴わない以下のような表現もあります。
(♪)It looks like he is very tired.
(♪)It looks as if he is very tired.
(♪)It looks as though he is very tired.
上の一連の「非人称のit構文」を、「that節内の主語」を冒頭に出した不定詞構文で言い換えると、次のようになります。
(♪)⇒He seems(=appears) [to be] very tired.
こうした構文中の[to be]は非常にしばしば省略されます ― が、「to be+副詞句」の形態となる場合には”to be”を省略してはいけません。
♪They appeared(=seemed) to be in the middle of a trouble.
彼らは厄介事の真っ只中にいるように見えた。
上の英文の「to be in the middle of a trouble」から”to be”を省略してしまうと、次のように全く別の意味に化けてしまいます。
♪cf: They appeared in the middle of a trouble.
彼ら(それら)は厄介事の真っ最中に出現した。
「It+非人称動詞+that …」が「that節の主語+非人称動詞+to be 副詞句」で書き換えられる時の”to be”は省略してはいけない ― 省略可能なのは「that節の主語+非人称動詞+[to be] 形容詞」の場合である
と覚えておきましょう。
●that節内の動詞が「do動詞」の場合
♪It seems [that] he knows everything about anything, women [being] excepted(=excluded).
彼はあらゆる物事に関して全てを知っているように思える・・・「女性」に関してだけは例外だが。
不定詞構文で言い換えた時に[to+be動詞]になる場合はほとんど省略されますが、”to+do動詞”になる場合は省略できません。
(♪)⇒He seems to know everything about anything, excepting women.
⇒(×)He seems everything about anything, excepting women.
●that節内の時制が主文より”過去”にズレている場合
♪It seems [that] he has never handled a gun.
彼は、銃器を取り扱った経験がまるでないようだ。
「主文の時制」(上例では”現在”)に対し、「that節内の動詞の時制」(上例では”現在完了”)が”同時~未来”なら「to+~」(単純形不定詞)で問題ありませんが、”過去”へとズレ込んでいる場合には「to have+~ed」(完了形不定詞)で書き換える必要があります。
(♪)He seems never to have handled a gun.
上の”never to have handled”は最も基本的な形態ですが、次のような「分離(分割)不定詞(split infinitive)」で用いられる場合も多くあります。
(♪)He seems to have never handled a gun.
「完了形不定詞」と「否定形不定詞」の合体形態はまどろっこしいので、実際には次例のように”never(あるいはnot)”は「不定詞」から切り離して「動詞」側に付けて用いる方が望ましい形と言えます。
(♪)He never seems to have handled a gun.
【prove】・【turn out】は「結果的に~だとわかる、判明する、結局~だった」の意味を表わす非人称動詞です。
♪It proved that their method was totally useless.
彼らのやり方は結局まったく役立たずだと判明した。
動詞【prove】を用いた「非人称主語構文」では、「that」は省略できません。
自動詞の”prove”は「結果的に~だとわかる」の意味ですが、他動詞の”prove”は「~を証明する」の意味(例:It proved his innocence.:それが彼の潔白を証明した)になります。
「非人称主語構文」の「It+prove+that (S) ~:(S)が~だと判明する」から「that」を省略してしまうと、「他動詞のprove」と錯覚されて「It+prove+(O):それが(O)を証明する」という(裁判や数学で頻出する)意味に誤解されやすいので、その危険を避けるため(分別のある人ならまず)省略しないのです。
(♪)It turned out [that] their method was totally useless.
動詞【turn out】を用いた「非人称主語構文」では、[that]を省略することができます。
上の一連の「非人称のit構文」を、「that節内の主語」を冒頭に出した不定詞構文で言い換えると、次のようになります。
(♪)⇒Their method proved(=turned out) [to be] totally useless.
「S+prove(=turn out)+to be+C」の構文の「to be」は、後続部が「形容詞」の場合は省略される場合が多い・・・が、「to be」の後続部が「名詞」の場合は「to be」を省略せずにそのまま残すのが普通です。
「to be」の後続部が「形容詞」であれば、先述した「自動詞のprove:~だと判明する」を「他動詞のprove:~を証明する」と誤解する可能性はゼロなので、「to be」は安心して省略できます・・・が、後続部が「名詞」だとその危険性が生じるので、「to beは省略しない方が無難」というわけです。
♪It proved(=turned out) that their method was a trash.
(♪)⇒Their method proved(=turned out) to be a trash.
彼らの方法論は結局のところクズだった。
(限りなく×に近い▲)Their method proved(=turned out) a trash.
・・・上の英文がダメな理由は、次の2種類の誤訳を生じる危険性があるから・・・
(×)彼らの方法論はクズを証明(prove)した。
(×)彼らの方法論はクズを産出(turn out)した。
(×)彼らの方法論はクズを証明(prove)した。
(×)彼らの方法論はクズを産出(turn out)した。
後続部が「形容詞」なら[to be]は省略するが、それ以外(名詞 / 副詞句)なら「to be」は省かずにそのまま残す、というルールは、「prove / turn out」に限らず、「to be」を伴うあらゆる表現に関する大原則として覚えておきましょう。
【happen】・【chance】は「たまたま、偶然にも~する」の意味を表わす非人称動詞です。
【chance】は古風な文語表現で、口語英語ではほとんど用いられません。
♪It [so] happened that I knew the answer.
(♪)(稀)It [so] chanced that I knew the answer.
私はたまたま答えを知っていた。
他の非人称動詞と異なり、「It so happened(=chanced) that」のように副詞”so”(=そのように)を伴うことがあるのが【happen】・【chance】の特徴です。
【happen】・【chance】を用いた「非人称主語構文」では”that”は省略できません・・・が、[so]は省略可(というか現代英語での使用例はまれ)です。
(×)It happened I knew the answer.
”that”を省略して「It happened」としてしまうと、「それ(地震や火災等)が発生した」という形で「It happened.」の部分で解釈が完全終始してしまう響きとなり、「[that]・・・」以降の内容が切り捨てられてしまうことになって具合が悪いのです。
他の”非人称動詞”と異なり、【happen】の場合にはわざわざ副詞”so”を付け加えて「It so happened that」とする(場合がある)のも、「It happened.:それが発生した」というSV(第一文型)だけで文意が完結するものではないことを”so”の挿入によって際立たせようという意図があってのことです。
上の一連の「非人称のit構文」を、「that節内の主語」を冒頭に出した不定詞構文で言い換えると、次のようになります。
(♪)⇒I happened to know the answer.
(♪)(稀)I chanced to know the answer.
”be動詞”を伴う「happen(=chance) to be」の構文からは、”to be”の省略はできません。
♪They happened(=chanced) to be there.
彼ら(それら)はたまたまそこにいた。
上の英文から”to be”を省略してしまうと、次のような全く別の意味の英文に化けてしまいます。
♪cf: They happened there.
それらはそこで発生した。
「happen(=chance) to be+α」から”to be”省略ができない、というルールは、上例のように「α=副詞句」の場合のみならず、次例のような「α=形容詞」の場合にも当てはまります。
♪His sister happened(=chanced) to be very beautiful.
たまたま彼の姉(妹)が大変な美人だったのだ。
(×)His sister happened very beautiful.
「非人称動詞」の【happen】・【chance】および【seem】・【appear】は、副詞”there”を擬似的主語とした構文で用いられることもしばしばあります。
非人称動詞【prove】【turn out】に”there”が擬似的主語として使われることは、ありません。
♪There happened to be no glass around, so he drank the wine straight from the bottle.
たまたま手近なところにグラスがなかったので、彼はワインをラッパ飲みした。
「there happened to be+S」の構文では、”to be”の省略はできません。
(×)There happened no glass around, so he drank the wine straight from the bottle.
上の御行儀悪い内容の英文は、「It [so] happened that…」の形式的な形態に書き換えると、いささか気の抜けたビールっぽい退屈なものになってしまいます・・・やはり英語人種的には”冒頭はThere!”の方がしっくりくるのです。
(♪)(△)It [so] happened that there was no glass around, so he drank the wine straight from the bottle.
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