”I think, therefore, I am.(私は考える、であるがゆえに、私は存在する)”という「文(sentence)」を構成する”I think(私は考える)”および”I am(私は存在する)”の「節(clause)」どうしをつなぐ”therefore(それゆえに)”は、「接続詞(conjunction)」です。
「接続詞(conjunction)」は、ただ単に複数の単語を連結するつなぎ語として機能する以外にも、一定の意味のまとまり(節や句)どうしの間を「順接(Aである、がゆえにBである)」や「逆接(Aである、しかし、Bである)」等の関係で結ぶ転調記号として働くことの多い重要語句です。
「接続詞」の総数は少なく(かなり文語的なものまで含めても五十にも満たぬ数です)、英文中での出現頻度も極めて高いので反復経験を通してその意味は自然と覚えられるはずです。
辞書を引くと、”therefore”は「接続詞(conjunction)」ではなく「副詞(adverb)」と記載されています。
「副詞」は「文章・節の内部に構造的に組み込まれている(が、意味の上では軽く浮いている)語句」です。
先の例文「I think, therefore, I am.」に於ける”therefore”は「文章内に存在する二つの異なる小型文章(=節)の間を<原因 / 結果>の関係でつなぐ語句」であり、前後の「節」からは独立した「外れ者」なのですから、これは論理的には「接続詞(conjunction)」であり、「副詞(adverb)」と呼ぶことは(文法的に)間違いです。
この”therefore:それ故”が何故「副詞(adverb)」とされるかと言えば、端的に言えば、この語が語源的に”there+前置詞”に由来する一連の語句(thereby / therein / therewith等)と同様の出自を持ち、「文中に組み込まれて用いるのが基本」だからです。
・・・が、この「thereforeは接続詞ではなく副詞」という定義には、もう少し突っ込んで考えてみるべき大事なテーマが含まれています。
文法的には「接続詞」である「異なる句・節の仲を取り持つ語句」を、その語源学的組成から「副詞が文頭に置かれただけ」と言ってしまう考え方の根底にあるものは、何でしょう?・・・実はそこには、次のような「文法」というよりは「便法」と言うべき事情があるのです。
●「辞書作成者」の立場
=限られた紙面上での記述を簡略化するために、「副詞」以外に「接続詞」を別立てする煩雑さは敢えて拒否、その上で(「文中、または文頭に置いて」という記述を添えることで)「文頭に置かれた副詞は、語源的には副詞でも、文法上は接続詞である」という学習者の理知的判断に期待する
何のことはない、「副詞であるはずのない接続詞用法を敢えて<副詞>扱いする理由」は「辞書の記述の煩雑化を回避するための便法」にすぎないのです。
以上が、「副詞由来の接続詞」を正しく扱うために必要な(文法上の)知識です。
ところが、上述のような知識・論理性を持ち合わせぬ半端者の手にかかると、またもう一つ実に困った立場が生じることになります。
●自分自身の頭は使わず他者の言い分の受け売りに終始するだけの教条主義者の立場
=辞書に「副詞」と書いてある以上、それは「副詞」であって「接続詞」ではないのである!
実際、こういう頭の堅い(&悪い)連中が世の中には山ほど存在すること、語学以外の現実世界の諸情況を思い浮かれば、皆さんもきっと痛感できると思います・・・この種の人々には「知的想像力」が致命的に欠落しているのです。自分自身を「紙面を節約したい辞書制作者の立場」に当てはめてみれば、「副詞 / 接続詞を別立てする」作法は捨てて「(文中、または、文頭に置いて)と書き添える」作法に走るのもわからないではないな、と考える程度の芸当は可能なはずなのに。
上の例文の”therefore”のように、元来は「副詞(adverb)」であったものが、文中での用いられ方によっては「接続詞(conjunction)」や「形容詞(adjective)」、あるいは「間投詞(conjunction)」へと「品詞化け」する例は現実にはたくさんあります。
「物の本に書いてある表面的な記述」よりも「現実の脈絡と自らの知的推論能力」に依拠した判断力を磨くチャンスは、英語世界には山ほど溢れている、というわけです。
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・・・Teaching is the best way of learning(教えることは最高の学びである)・・・自ら学んだ知識は、他者に役立てることで、ますます磨かれ、揺るぎない英知として皆さんの脳裏に強固な位置付けを占めるようになるものです・・・ダイヤモンドの原石磨きの場として、この「コメント道場」を積極活用してくださいね!
●回答者が最初に発した疑問点が解決した場合にはシンプルに
♥Got it, guratche!♥・・・発音は「ガリット・グラッツィェ!」意味は「了解(英語)、感謝(イタリア語)」
と返答して「御挨拶」はそれでおしまい、ということにしましょう。
・・・ここは「おともだち」と交信するための仲良し広場ではないので、「白山羊さんと黒山羊さんのお手紙交換」みたいなことを延々繰り返していたのでは質問者・回答者双方にとって時間・労力・忍耐力の空費ですし、それ以外の受講者の皆さんにとっても肝心の「質問」・「回答」の部分が「あいさつのこだま」の陰に隠れてしまったのでは迷惑な話になってしまいます。
・・・というわけで、以下の二点の約束事を定めておきますので、皆さんどうぞ御納得の上で質問・回答ください:
◆回答者は、質問者から自分への直接のお礼のコメントがなくても、悪く思わないこと◆