節(clause)と句(phrase)

    
 「主語(subject)」と「述語動詞(verb)」を持ち、何らかのまとまった意味内容を表わす語句の集合体(普通なら「文」と呼ばれるもの)が、更に大きな意味のまとまりの一部として組み込まれている場合、これを(「文」ではなくて)「節(clause)」と呼びます。
 「文の中にある文=節」と考えるとわかりやすいでしょう。
 数学ふうに定義すれば、「文の部分集合となる文は、節」ということになります。
 コンピュータ工学が得意な人向けに定義すれば、「subroutines(サブルーチン)に相当するのが節、その集合体(=プログラムの全体)が文章」ということになります。
 地政学的表現を使えば、「文章は国全体、それを構成する郡・県に相当する細分区画が、節」ということになります。
 民芸品好きな人向けの類推で言えば、「マトリョーシカ人形の一番外側の大きいやつは、文 / それ以外の小さいやつは、節」です。
 最初に紹介した”I think, therefore, I am.(我思う、故に、我在り)”という「文(sentence)」のうち、”I think(我思う)”および”I am(我在り)”はいずれも
●主語(I)と動詞(think / am)を持ち、一定の意味を表わしている
●より大きな意味のまとまり(文章全体)の部分集合となっている
の双方の条件を満たすので、「節(clause)」ということになります。
 「節(clause)」とは、「文(sentence)」の部分集合(のうちで「主語:S=subject」」と「述語動詞:V=verb」を備えた意味のまとまり)だと覚えておきましょう。
 「文(sentence)」の部分集合のうちで、「主語(subject)」と「述語動詞(verb)」を備えていない意味のまとまりは、「句(phrase)」と呼ばれます。
 「句」は、先程解説した「節」と対照的な(そしてより簡潔な)文章成文です。
 「節」で構成された先程の例文「I think, therefore, I am.:我思う、ゆえに、我在り」を、「句」で書き換えると次のような感じになります。
My thought, inevitably, my existence.
私の(My)思考(thought)、取りも直さずそれは(inevitably)、私の(my)存在(existence)。
 上の「句」の例文などは、文章の体裁を成してはいないものの、何を言おうとしているかはおおよそ伝わります。ここまで崩した「句」になるともうそれは「文」というより「つぶやき」あるいは「詩」のような感じではありますが、英語は概して「節」よりも「句」を好む言語だということは覚えておきましょう。
 「主語―述語」の形式をきちんと整えた「節」は、いわば堅苦しいフォーマルドレスみたいなものですが、「句」のほうは(意味上は主―述の関係を示唆しても)形式的に「主語―述語」の体裁にこだわらないカジュアルウェアみたいで、使い勝手がよいのです。
 日本人英語学習者は概して(形式の整った)「節」に傾き、(形式よりも意味に重きを置いた自由自在な)「句」の表現を苦手とします・・・ですから、「節はやめて句を使おう!」と意識するだけでも「英語らしい表現」へと格段に近付きます。逆に、漫然と英語を学んでいる日本人は「節だらけの重苦しい英文」が板についてしまい、英語の達人にはなれません。
 英語学習の最初期には「形式」にこだわり「節離れ」できないのも仕方ありませんが、ある程度慣れてきたならば「節を目の敵にして句ばかり可愛がる」ぐらいで(特に日本人英語学習者の場合は)ちょうど良いのです。
    

コメント (1件)

  1. 之人冗悟
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