単一の被修飾語と複数の同格的修飾語の間の共通関係:X(M1_M2)

    
 今回もまた「”肩書き”的同格」のせいで解釈がややこしくなる「単一の被修飾語(名詞)+複数の同格(肩書き)的修飾語(形容詞)」の共通構文です。
 「肩書き」にあたるものは(外形上は名詞ながら)”形容詞”的修飾語であり、その「”肩書き”を持つ存在」こそが真打ちの”名詞”なのですが、外形上はどちらも”名詞”なので、見た目だけの判断では解釈がメチャクチャになってしまうという(日本人英語学習者にとっては)実に恐るべき構文・・・テーマとしては後々出て来る「同格(APPOSITIVE)」に属するものですが、「共通構文(COMMON-RELATION)」としても心してかかるべき難敵なので、ここでしっかり対処法を学んでおきましょう。
Very few Japanese take serious interest in God, mankind’s greatest defender, their gravest punisher, and science’s biggest victim.
神 ― 人類の最大の守護者にして彼らの最も厳しい処罰者であり科学の最大の犠牲者でもある神に対し、真剣な興味を抱く日本人は非常に少ない。
 「science’s biggest victim」の部分はやや口語的で、普通なら「the biggest victim of science」となるべきところだが、直前に並ぶ他の2つの”同格的修飾語”の形態が「{mankind’s} greatest defender / {their} gravest punisher」のように{所有格}なので、これらに合わせて{science’s}の形態にしてある。
(S)<{Very few} Japanese> (V)take (O)<{serious} interest> in <God>, (Adj1)<mankind’s greatest defender>, (Adj2)<their gravest punisher>, and (Adj3)<science’s biggest victim>.
 上の英文では、「take interest in」の前置詞”in”の目的語は<God>1語のみ・・・後続部の (1)<mankind’s greatest defender>, (2)<their gravest punisher>, and (3)<science’s biggest victim>は、前置詞”in”の目的語が更に3つ並んでいるように思えますが、実際にはこれら3つは<God>という名詞の内容説明になる”同格的修飾語”・・・この関係を見落とすと、次のような「take interest in+目的語1(God)、目的語2(mankind’s greatest defender)、目的語3(their gravest punisher)、目的語4(science’s biggest victim)」のトンデモ誤訳に陥ります:
(×)(1)神と(2)人類最大の守護者と(3)彼らの最も苛烈な処罰者と(4)科学の最大の犠牲者とに、真剣な興味を抱く日本人は非常に少ない。
 この種の「単一被修飾語+複数の同格的修飾語」の解釈のどこが難しいかと言えば、それは「被修飾語にかかる同格的修飾語」なのか「被修飾語とは無関係な名詞成文」なのかの解釈が”語形”からでは判別不能 ― 前後の文脈から判断するしかない ― ということです。
 例えば、上の英文とよく似た形の次の英文では、先程とはだいぶ違った解釈が(文脈に照らして)必要になります:
Very few Japanese take serious interest in God, mankind’s greatest defender and science’s biggest victim, and the Devil, mankind’s nastiest tempter and science’s worst abuser.
人類最大の守護者にして科学の最大の犠牲者である神、および、人類にとって最もイヤな誘惑者にして科学の最悪の悪用者である悪魔、これらに対して、真剣な興味を抱く日本人は非常に少ない。
 「science’s worst abuser」の部分は、形式上は”所有格”だが意味上は”目的格”である点に要注意 ― 即ち、「(S)the Devil (V)abuses (O)science (in the worst way):悪魔は科学を最悪の形で悪用する」の意味であって、「(×)science(科学)がthe Devil(悪魔)をabuses(悪用する)」のではない。
(S)<{Very few} Japanese> (V)take (O)<{serious} interest> 【in】 (O-1)【God】, (Adj1)<mankind’s greatest defender> and (Adj2)<science’s biggest victim>, and [in] (O-2)【the Devil】, (Adj1)<mankind’s nastiest tempter> and (Adj2)<science’s worst abuser>.
 【God:神】に関する”同格修飾語”は (Adj1)<mankind’s greatest defender:人類の最高の守護者> and (Adj2)<science’s biggest victim:科学のせいで最悪のワリを食った者>の2つで終わり、次に出て来る【the Devil:悪魔】は「”神”と同格」になる道理はない(”神”と”悪魔”は正反対の概念である)ので、後続の(Adj1)<mankind’s nastiest tempter:人類の最もイヤな誘惑者> and (Adj2)<science’s worst abuser:科学を最悪の形で悪用する者>はこの「悪魔」の同格的内容説明とみなして、「take interest 【in】 (O-1)【God】 and (O-2)【the Devil】」の2つの目的語が並立する構造として解釈します。
 上記の判断があやふやで【神】も【悪魔】も興味の対象外の日本人ならば、次のような得体の知れぬ和訳をしてくれるかもしれません・・・
(×)(Adj1){人類最大の守護者}にして(Adj2){科学の最大の犠牲者}にして(Adj3){人類にとって最もイヤな誘惑者}にして(Adj4){科学の最悪の悪用者}の(Adj5){悪魔}であるところの【神】に対して、真剣な興味を抱く日本人は非常に少ない。
 上のような誤解が生じ得るのは、そもそも上の英文がある種の”手抜き”をしているからこそです ― それは
 「God:神」と対照的成文となる「the Devil:悪魔」なのだから、片方が前置詞付きの「【in】 God」なら、もう一方もやはり「【in】 the Devil」という前置詞付きにして示しておけばよいものを、その[in]を付けずにおくから誤解の元になる
ということです。
 では、何故そのような誤解を招きやすい「前置詞[in]なしの”the Devil”」を用いたか、と言えば、それは単純に「語調」の問題です ―
「take interest 【in】 “God”」の時点では前置詞【in】を省くことは構造的に不可能
だけれども
「and [take interest] [in] “the Devil”」の時点では前置詞[in]の省略は(しないほうがよいのだけれども)可能
である上に、語調の上からは
「God:神」と対照させる上では「the Devil:悪魔」だけの形のほうが「【in】 the Devil」という前置詞のシッポ付きの形よりも良い
という判断が働くので、「文法的合理性から前置詞【in】を付ける」よりも「音調的整合性から前置詞[in]は省く」という道を選んだ、というわけです。
 とまぁそういうわけで、英語人種は「文法」よりも「音調」を偏愛するキライがあることは指摘した上で、上の英文から日本人英語学習者が読み取るべき教訓は、これ:
前置詞は、なまじ省略されると、読み手・聞き手としては大迷惑な誤解の元となる
 日本語にはそもそも「前置詞なんてものは存在しない」のですから、日本人はややもすれば(上の英文のような「音調的整合性判断」とは無関係に)「うっかり前置詞省略ミス」をやらかしまくります・・・日本人の皆さんが英作文する時には「前置詞は絶対省略しない!」ぐらいの強い意識で臨むほうが、身のためです。
 「単一の被修飾語」に「複数の同格的修飾語」が掛かる共通構文としてはもう一つ、「複数の同格節(=内容節)」が「単一の名詞」に掛かる(かなりマイナーな)事例があるので、そちらは特集記事の中で解説しておきましょう。
    

コメント (1件)

  1. 之人冗悟
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