名詞相当語句「A {B}」直結形同格で、{B}がAの同格的修飾語となる場合

    
 まず最初に「同格(appositive)」の定義について触れておきましょう。
The term Madonna refers in art to the image of mother Mary, either alone or with baby Christ.
“マドンナ”という語は、美術に於いては”聖母マリア”の像 ― 彼女一人かまたは赤ん坊のキリストと一緒に描かれたもの ― のことである。
 「refer to A」は「Aに言及する」の意味の熟語。上の英文では「refer (in art) to A:(美術の分野に於いては)Aのことを言う」の形の「挿入副詞句含み」の構造になっている点に注意。
 上の英文の中の次の3つの部分が「同格」です:
●the term Madonna=マドンナ(=聖母)という語
●mother Mary=母のメアリー(=マリア)
●baby Christ=赤ちゃんのキリスト
 ”mother:母” / “baby:赤ちゃん”の品詞は「名詞(noun)」です ― が、上例では、後続の名詞”Mary:マリア” / “Christ:キリスト”を修飾する「形容詞(adjective)」としての機能を果たしており、
●{mother} Mary={母である}マリア
●{baby} Christ={赤ん坊である}キリスト
という「{形容詞}+名詞」の意味関係を表わしています。
 一方、「the term Madonna」の方は逆に、
the term {Madonna}={マドンナという}用語
という形で、「名詞+{形容詞}」の意味関係を表わしています。
 このように、並列する2つの「”名詞”と”名詞”」のうち、いずれか一方が「他の”名詞”を修飾したりその内容説明をする”形容詞”」としての機能を果たす場合、これら2つの名詞は「同格(appositive)」の関係にある、と呼ばれます。
 ”同格”の出現形態には様々な種類がありますが、その本質は
●名詞+名詞⇒{形容詞}+名詞
●名詞+名詞⇒名詞+{形容詞}
という「名詞の形容詞化」 ― 並び立つ2つの名詞成文のいずれか一方が他方の{お飾り / 内容説明、あるいは言い換え}になっていたら、それらは”同格”である、ということになります。
 ”同格”の難しいところは、「外形上の特徴」から瞬時に「あ、これは”同格”の形だ!」と判明する事例はあまり多くない、ということです。
 上に示した3つの”同格”は、ごく短い2つの名詞が直結している形なので「片方の名詞がもう一方の名詞のお飾り」であることが一番わかりやすい形です・・・が、「the term A:Aという語」の表現は頻出するので”定型句”的に処理するのも容易でしょうが、他の2つ”mother Mary”と”baby Christ”は(キリスト教圏の人々はともかく)馴染みのない日本人にとっては「{形容詞}+名詞」として捉えるのは難しいかもしれません・・・ましてや、並列する名詞成文がそれぞれ長~いものになれば、”同格”関係の判別はいよいよ難しくなってきます。
 以下、「同格の様々なパターン」について紹介してゆきますが、「”同格”は、外形ではなく、語句相互の意味関係から見抜くもの」という本質をどうぞお忘れなく ― 文中での位置付けがよくわからない”名詞成文”を見たら、「他の名詞成文の”形容詞的修飾語”・”内容説明”・”言い換え”として機能しているのでは?」と考えるようにするとよいでしょう ― “同格”を見抜くには、そうした「思考パターン」の方が「外形パターン」よりも遙かに有効なのです。
 ”名詞相当語句(substantive)”とは「(単語レベルの)”名詞(noun)”」および「”名詞”に相当する文章成文」のことです。
 ”同格(appositive)”は「(単語レベルの)名詞A+名詞B」のみならず、「(文章レベルの)名詞相当語句A+名詞相当語句B」の形態を取る場合もあるので、”名詞(noun)”ではなく”名詞相当語句(substantive)”という呼び名を用いています。
 「名詞相当語句直結型同格」とは、並列する複数の”名詞相当語句”が、何の記号も介在せずに直結して「AB」の形態を取るものを指し、意味内容的には次の2種類に分かれます:
●「A {B}」の直結形を取り、後続の名詞相当語句{B}が先行する名詞相当語句Aの{形容詞的修飾語}となるもの
●「{A} B」の直結形を取り、先行する名詞相当語句{A}が後続の名詞相当語句Bの{形容詞的修飾語}となるもの
The term appositive originally means “contiguous position.”
“appositive(同格)”という語は元来”接触する形での配置”を意味する。
 「同格」という日本語は「どちらが格上でも格下でもない対等の関係」を連想させます・・・が、英文法に於ける”appositive(同格)”では「並列配置された名詞相当語句のどれか1つが”主役”、他の名詞相当語句はその補足的な”引き立て役”」という関係になります。
 しかしながら、ややこしい(or面白い)ことに、「英語での主役 / 引き立て役」と「日本語訳した場合の主役 / 引き立て役」の関係は、しばしば逆転します。
 上例に於ける”the term appositive”の組み合わせの中での意味上の重みは、”the term:単語”よりも”appositive:同格”の方が(明らかに!)上ですから、「”appositive:同格”が主役 / “term:語”は脇役」といった感じなのですが、日本語訳した場合には「{”同格”という}単語」ということで、「主役 / 脇役」の関係が逆になります。
 この”同格”の講座に於ける「主役 / 脇役」の位置付けは、「日本語訳した場合の被修飾語 / {同格的修飾語}」に言及するものだと思ってください。
名詞相当語句直結型「A {B}」同格の類例
●the color {purple}:紫色=「{紫}という色」
●the year {2001}=2001年=「{2001}という年」
●the number {seven}=数字の7=「{7}という数字」
●the band {Queen}=バンドのクイーン=「{クイーン}というバンド」
●the TV series {Star Trek}=テレビ番組シリーズのスタートレック=「{スタートレック}というテレビ番組シリーズ」
●the word {love}={愛}という言葉
    

コメント (1件)

  1. 之人冗悟
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