冠詞(a / an / the)付きの同格表現

A SARS strain COVID-19 wreaked the greatest havoc upon the world since Spanish flu in 1918.
SARS(Severe acute respiratory syndrome:重症急性呼吸器症候群)の菌株の一種であるCOVID-19(Coronavirus disease 2019:新型コロナウイルス感染症2019)は、1918年のスペイン風邪以来最大の壊滅的被害を世界にもたらした。
 現時点(2021年11月)でなお全世界でその終息が見通せない「新型コロナウィルス感染症」、その原因菌は、2002~2003年にアジア地域で感染拡大した「SARS(サーズ)コロナウィルス」のバリエーションとされています。
 恐ろしいことに、この種のウィルスは常に変異を繰り返します ― インフルエンザのウィルスなどは毎年毎年”新種”への変異を遂げて、毎年毎年新たなインフルエンザ用ワクチンの接種を人類に強い続けているわけです。
 「無数のバリエーションがあり得るウィルス」の中の「ほんの1種」に過ぎないということで、上の英文中の同格表現「A {SARS strain} COVID-19:{サーズウィルスの変異株}(の1つである)コロナウィルス2019」には、「数あるものの中の1つ(one of many)」という不定性を表わす「不定冠詞”a”」が付いているわけです。
 上の同格表現に於ける「不定冠詞”a”」は「one of them:いくつもある中の1つにすぎない」という”不定性”のものでしたが、次の英文中の同格表現に於ける「不定冠詞”a”」は”物語性”の演出のために用いられており、「a certain ~: とある~」の響きを帯びています。
In 1974, a Japanese TV animation serial “Space Battleship Yamato” launched forth, only to untimely sink next year in just 26 episodes.
1974年、日本の連続テレビアニメ「宇宙戦艦ヤマト」発進・・・するも、翌年、たった26話で早々に沈没。
 「宇宙戦艦ヤマト」(1974年TVオリジナル版)の英語版には、「Space Cruiser [Yamato]」・「Star Blazers」・「Cosmoship Yamato」といったタイトルもあり。
 「only to ~」は「しかし結果的には~に終わる」という「”結果”の副詞用法不定詞」。
 「untimely sink」の”untimely”とは「(本来の予定・寿命等を満了することなく)早々に」の意味、「sink:沈む」とは「戦艦が沈没する」のイメージに重ねて「『宇宙戦艦ヤマト』のTV放映が(裏番組の『アルプスの少女ハイジ』に撃沈されて)当初予定の39話から26話に大幅に切り詰められて打ち切りになる」という残念な事情を皮肉っぽく言い表わしたもの。
 「a {Japanese TV animation serial} “Space Battleship Yamato”:{日本の連続テレビアニメ}(である)宇宙戦艦ヤマト」の部分は、連結する名詞相当語句がそれぞれ相当に長いですが、これも立派な”同格”の表現です。
 「【a】 {Japanese TV animation serial} “Space Battleship Yamato”」の部分は、本来ならば”無冠詞”で「{Japanese TV animation serial} “Space Battleship Yamato”」となるのが同格表現の基本です ― それを敢えて「不定冠詞”a”付き」にしてあるのは、「”宇宙戦艦ヤマト”という【ある一つの】日本の連作テレビアニメ」という形で”物語性”を演出しよう、という意図に基づくものです。
 これとは対照的に、「あの有名な~」という”知名度の高さ”を印象付けるために、通例”無冠詞”の同格表現に「定冠詞”the”」を付ける場合もあります。
The so-called anime boom in Japan dates back to the 1977 film “Space Battleship Yamato” ― abridged version of 1974 TV serial for show in theaters.
いわゆる日本のアニメブームは、1977年の映画”宇宙戦艦ヤマト” ― 1974年の連続テレビ番組を劇場公開用に短縮したバージョン ― までさかのぼる。
 「anime boom:アニメブーム」は、英語では当然「animation boom」となりそうなものだが、日本の妙ちくりんな横文字文化は海外でもつとに知れ渡っている(&面白がられている)ので、「アニメは(animationじゃなくて)anime」・「絵文字は(emoticonじゃなくて)emoji」といったふうに「japanize(日本化)されたまんまのヘンテコ英語」で使うのがCOOL!だったりする。
 これは後々に出て来る同格テーマの先取りになりますが、上の英文では、”―(ダッシュ)直後”の「abridged version of 1974 TV serial for show in theaters:1974年テレビシリーズの劇場公開用短縮版」が、”―直前”の「the 1977 film “Space Battleship Yamato”:1977年の映画”宇宙戦艦ヤマト”」の”内容説明”となっています。
 これら”―(ダッシュ)前・後”の同格表現を、”冠詞”という観点から眺めると、
●「abridged version of 1974 TV serial for show in theaters」は無冠詞
●「the 1977 film “Space Battleship Yamato”」は定冠詞”the”付き
と、対照的な形態になっています・・・その理由は以下の通りです:
●「abridged version of 1974 TV serial for show in theaters:1974年のテレビ連作版を劇場公開用に短縮したヴァージョン」は、普通の英文ならその”限定性”に鑑みて「定冠詞”the”」が付くものの、ここでは”―(ダッシュ)直前の同格(内容説明)”として用いられているので”形容詞扱い”として無冠詞になる・・・そしてまた「いくつもあるヴァージョンの中の1つ」という脈絡でもないので「不定冠詞”an”」も付かない
●「【the】 1977 film “Space Battleship Yamato”:1977年の映画(である)”宇宙戦艦ヤマト”」の同格表現(「{A} B」={Aである}B)は、通例”無冠詞”になるが、この文脈では「日本アニメ史上名高い【あの】劇場公開版ヤマト」という形でその”知名度の高さ”を強調する意味で「定冠詞【the】」を付けている
 定冠詞”the”については、他にもいろいろ特徴的な使い方があるので、特集記事の中で更に解説しましょう。

コメント (1件)

  1. 之人冗悟
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