これは後々に出て来る同格テーマの先取りになりますが、上の英文では、”―(ダッシュ)直後”の「abridged version of 1974 TV serial for show in theaters:1974年テレビシリーズの劇場公開用短縮版」が、”―直前”の「the 1977 film “Space Battleship Yamato”:1977年の映画”宇宙戦艦ヤマト”」の”内容説明”となっています。 これら”―(ダッシュ)前・後”の同格表現を、”冠詞”という観点から眺めると、
●「abridged version of 1974 TV serial for show in theaters」は無冠詞
●「the 1977 film “Space Battleship Yamato”」は定冠詞”the”付き
と、対照的な形態になっています・・・その理由は以下の通りです:
●「abridged version of 1974 TV serial for show in theaters:1974年のテレビ連作版を劇場公開用に短縮したヴァージョン」は、普通の英文ならその”限定性”に鑑みて「定冠詞”the”」が付くものの、ここでは”―(ダッシュ)直前の同格(内容説明)”として用いられているので”形容詞扱い”として無冠詞になる・・・そしてまた「いくつもあるヴァージョンの中の1つ」という脈絡でもないので「不定冠詞”an”」も付かない
●「【the】 1977 film “Space Battleship Yamato”:1977年の映画(である)”宇宙戦艦ヤマト”」の同格表現(「{A} B」={Aである}B)は、通例”無冠詞”になるが、この文脈では「日本アニメ史上名高い【あの】劇場公開版ヤマト」という形でその”知名度の高さ”を強調する意味で「定冠詞【the】」を付けている
♪The legendary gunman Billy the Kid is said to have killed twenty-one people in his twenty-one short life.
伝説のガンマンのビリー・ザ・キッドは、21年の短い生涯のうちに21人を殺したと言われている。
Billy the Kid(1859-1881)の殺害人数は、公式には8名だが、「【21】歳で友人の保安官パット・ギャレット(Pat Garrett)に射殺されるまでに、年齢と同人数の【21】人を撃ち殺した」というほうが”伝説”としては通りがよいので、そういうことになっている。 日本の第二次世界大戦時の零戦乗り坂井三郎(1916-2000)の撃墜数が(公式的には28機なのに)【64機】となっているのが「坂井三郎を【大空のサムライ】として喧伝したアメリカ人伝記作家が、世界的に有名な日本の剣豪宮本武蔵の真剣勝負の数【64】にちなんで言い張っただけの無根拠な数字」でしかないのと似たような事例である。
上の英文の「Billy the Kid:ビリー・ザ・キッド」に見られる「人名+the+あだ名」の構造は、”alias:通り名・二つ名・又の名”の典型的パターンです。
「人名+the+あだ名」の類例
●Alexander the Great:アレクサンダー大王(=かの偉大なるアレクサンダー)
●Ivan the Terrible:イワン雷帝(=カミナリのごときイワン)
●William the Conqueror:征服王ウィリアム(=Norman Conquest:ノルマンディ征服を成し遂げたウィリアム)
●Popye the sailor-man:船乗りポパイ(=ホウレンソウを食べるとやたら強くなるアメリカンコミックの主人公)
●Felix the Cat:フィリックス・ザ・キャット(=アメリカンコミックスに出て来る顔の半分がお目々の黒猫)
Dwight David Eisenhower(ドワイト・デビッド・アイゼンハワー:1890-1969)は、”史上最大の作戦”として知られる1944年6月6日の「ノルマンディ上陸作戦」を指揮したことで有名な第二次大戦時のアメリカ陸軍「連合国遠征軍最高司令官」で、愛称は「General Ike:将軍アイク」。 その圧倒的名声を背景に、戦後のアメリカでは彼を大統領候補に推す声も多かったが、彼自身は政治に無関心で、二大政党「民主党・共和党」のどちらの支持者であるかさえも明らかにしなかった・・・が、1952年の大統領選での民主・共和両党からの出馬要請に対し、「過去20年間ずっと民主党政権が続いたこの国には、変更が必要だから」という理由で「共和党大統領候補」として重い腰を上げ、国民の圧倒的支持を受けて1953年~1961年までの2期を第34代アメリカ大統領として全うした。
「(V)become (C)<President of the United States>:(C)<アメリカ合衆国大統領>(V)になる」の部分では、「役職を表わす補語(C)は無冠詞」のルールに従って、”President”には定冠詞”the”を付けない。
♪Pope Gregory XIII is famous for having replaced the old lunar calendar with a new solar one known today as the Gregorian calendar; incidentally, Japanese comic book hero Golgo 13 has nothing to do with him.
世代(**世)を表わす数字は「ローマ数字」(俗に言う”時計文字盤数字”)で表わし、読む際には「the+序数詞(冒頭大文字)」(the First / the Second / the Third / ・・・ / the Thirteenth / ・・・)で読む・・・が、表記の際には「the」も「-th」も付かない「ローマ数字のみ」となる。
ちなみに、同じ英文中に出て来る「{Japanese comic book hero} Golgo 13:{日本の劇画の主人公}(である)ゴルゴ13」に含まれる”Golgo 13″は、「ゴルゴ・サーティーン」であって「(×)ゴルゴ・ザ・サーティーンス」にはなりません ― 「”ゴルゴ13”という名で知られる殺し屋が一人」いるだけであって、「ゴルゴの名を引き継いだ13代目」ではないのですから。
もしゴルゴ13の存命中に、誰かが彼の名をかたって「Golgo II(=Golgo the Second):ゴルゴ二世」などとホザいたなら、その者は確実にゴルゴの手にかかって命を落としていることでしょう ― ゴルゴ13は、自分のニセモノの存在を決して許さないのです ― ⇒シリーズ第53巻『崩壊 第四帝国 狼の巣』収録『ズドロナス・マリヨ』(1981年12月作品)等々参照。
「人名+the+序数詞」による”**代目”の表現の類例
●Lupin III(=Lupin the Third):ルパン三世
●Ishikawa Goemon XIII(=Ishikawa Goemon the Thirteenth):十三代目石川五ヱ門
●Queen Elizabeth II(=Queen Elizabeth the Second):女王エリザベス二世
●King Henry VIII(=King Henry the Eighth):国王ヘンリー八世
●Emperor Napoleon III(=Emperor Napoleon the Third):皇帝ナポレオン三世
♪Professor Jones, commonly known as “Indiana Jones”, hates his real name “Henry Jones Jr.”
上の英文には2つの同格表現(「Professor Jones:ジョーンズ教授」 / 「his real name “Henry Jones Jr.”:彼の本名である”ヘンリー・ジョーンズ・ジュニア”」)が出て来ますが、その2つめの「Henry Jones Jr.」の部分に注目しましょう ― 「親子で同じ名前を共有する」という(日本語ではまずあり得ない)作法がよく取られる英語圏では、
ただ、「区別」すると言っても基本的には「父親と”同姓同名”に”ジュニア”のおまけ付き」なだけの呼び名だけに、「親と同じ名」を付けられた子の側としては「!自分の名前がない!」という屈折した感情はやはり付き物のようです・・・ので、件(くだん)の「Henry Jones Jr.:ヘンリー・ジョーンズ・ジュニア」の場合は、「楽しい思い出をいっぱいくれた愛犬(シベリアンハスキー)」の名前をそのまま引き継いで「Indiana Jones:インディアナ・ジョーンズ」と名乗ることになった、という次第(⇒詳しくは、1989年の映画『Indiana Jones and the Last Crusade:インディアナ・ジョーンズ最後の聖戦』を御覧あれ)。
♪The Roman general and statesman Scipio the Minor was adopted to the eldest son of Scipio the Major.
ローマの軍人で政治家の小スキピオは、大スキピオの長男の養子に入った。
「{The Roman general and statesman} Scipio the Minor」の部分は「{ローマの将軍であり政治家でもある}小スキピオ」と解釈する。肩書きは”general:将軍” / “statesman:政治家”と2つあるが、そこに付く定冠詞”the”は1つだけなので、「2つの肩書きが1名の人物に共通してかかる同格構造」であって、「(×)<そのローマの将軍>と<小スキピオ>」の2名の人物が存在するわけではない。
●Scipio the Major(=Publius Cornelius Scipio Africanus):大スキピオ
●Scipio the Minor(=Publius Cornelius Scipio Africanus Aemilianus):小スキピオ
この二人、後者は前者の「長男の養子」(義理の祖父と孫)の関係にあたるローマの軍人政治家ペアなのですが、やたらと長い寿限無寿限無(じゅげむじゅげむ)みたいな呼び名の最後の”Aemilianus”だけが差別化ポイント、というのではめんどくさくて仕方ないので、世界史で扱う際には一般に「Scipio the Major:大スキピオ / Scipio the Minor:小スキピオ」という呼び方で区別します。
この場合の【the】は、先述した「Eisenhower the General:{将軍}【としての】アイゼンハワー / Eisenhower the President:{大統領}【としての】アイゼンハワー」に通じる用法で、「Scipio 【the】 Major:おっきい【ほうの】スキピオ / Scipio 【the】 Minor:ちっちゃい【ほうの】スキピオ」という感じです。
・・・Teaching is the best way of learning(教えることは最高の学びである)・・・自ら学んだ知識は、他者に役立てることで、ますます磨かれ、揺るぎない英知として皆さんの脳裏に強固な位置付けを占めるようになるものです・・・ダイヤモンドの原石磨きの場として、この「コメント道場」を積極活用してくださいね!
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一般の掲示板では、自分の質問に誰かが何かコメントを付けるたび、それなりのレスポンスを返すのが「作法」ということになっています・・・が、この「コメント道場」では
●回答者が最初に発した疑問点が解決した場合にはシンプルに
♥Got it, guratche!♥・・・発音は「ガリット・グラッツィェ!」意味は「了解(英語)、感謝(イタリア語)」
と返答して「御挨拶」はそれでおしまい、ということにしましょう。
・・・ここは「おともだち」と交信するための仲良し広場ではないので、「白山羊さんと黒山羊さんのお手紙交換」みたいなことを延々繰り返していたのでは質問者・回答者双方にとって時間・労力・忍耐力の空費ですし、それ以外の受講者の皆さんにとっても肝心の「質問」・「回答」の部分が「あいさつのこだま」の陰に隠れてしまったのでは迷惑な話になってしまいます。
・・・というわけで、以下の二点の約束事を定めておきますので、皆さんどうぞ御納得の上で質問・回答ください:
◆回答者は、質問者から自分への直接のお礼のコメントがなくても、悪く思わないこと◆